ジョイントコンパウンドと3Dペン、グルーガンを使ったファストプロトタイプ

投稿日: 2025/03/08 16:48:00

カテゴリ: 3GJ法

サムネイル:


タイトルだけ見ると何のことやらと思うかもしれないけれど、最近自分がファストプロトタイプ(アイデアを形にする際の高速造形)として気に入っているやり方で、試行錯誤するなかで落ち着いたやり方なので、一応共有できればと思う。

(【3/9 追記】手法に名前がないと次記事以降で参照するときに不便なので、3D-pen + Glue (gun) + Joint-compound より、「3GJ法」と呼ぶことにした。この名前については次記事の冒頭や脚注などで少し触れている。)

ちなみにこのやり方、正直他にも代替手法はたくさんあって、デジタル原型が主流であるなかで、同僚などにも先日紹介してあまり興味を持たれなかったので、公開するほどの価値があるか悩んだのだけれど、何かの役に立つことがあるかもしれないので記録しておきたい。

また、内容も少し長くなるかもしれないが、あえて一つの記事にまとめておきたいので、ざっと見て必要な部分だけ読み取っていただければ。

(※ このブログは不定期に公開したり非公開にしたりするので、その点にも注意。)

目次

概要

ジョイントコンパウンドをベース面に使い、骨格に3Dペン(PLA)、肉付けにグルーガン(ホットボンド)を使うことでファストプロトタイプから仕上げまでをスムーズに行える方法を次章以降で紹介する。

参考動画

以下は、この手法のベースになった参考動画。(以下は手法全体とは異なるものの、過程として部分部分に取り入れている)。

この後の説明で参照しやすいように、脚注に番号を振っておきたい。(リンクは脚注も同じもの。)

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メリット・デメリット

今回の手法のメリットは、単独で3Dペン(PLA)を使うなどした場合の大変な部分や苦手な部分を別の素材で補い、仕上げにジョイントコンパウンドを使うことで表面が硬化され、乾燥後の研磨・切削が可能になること。削りすぎた場合の塗り足しやかさ増しも容易。また、kgあたりの単価が(ジョイントコンパウンドは)樹脂粘土等よりも安価。(PLA単体よりも安価。)

デメリットは、ジョイントコンパウンドの(乾燥後の)研磨時に粉が舞うことと、ジョイントコンパウンドを複数回塗布するために乾く時間を待つ必要があること、そして、骨格と肉付けに使っている3Dペン(PLA)とグルーガンが熱に弱いこと *4。

なお、ジョイントコンパウンドやグルーガンを石粉粘土や樹脂粘土等で置き換えたり、3Dペンをアイスの棒や木材、針金などに置き換えるなどしてもらってもOK。

(特に3Dペン自体が最近あまり入手できなくなっていて、PLA自体は3Dプリンター用によく売ってあるものの、3Dペン自体はTemuとかAliExpressなどの中国系通販以外では最近見かけなくなった印象 *5。)

まとめにも書いているけれど、ジョイントコンパウンドはドライウォール工法用の建築材料なので、PLAも同じく、kg単位でしか買えないので初期投資はちょっとかかる(数千円だけど)。その分単価は安い。

前置き: 作った作品について

最冒頭部の写真を再掲

作品写真について、仕上げやディティールについては最終仕上げによって全く変わるので、あくまで参考程度にしてほしい(特にジョイントコンパウンドは乾燥後の研磨が可能で、研磨の程度で仕上がりが変わるため)。自分はファストプロトタイプが目的なので全体的に荒仕上げにしている。

なお、せっかくの立体作品なので、手元でぐるぐる回して見れるように、ロケットと惑星の作品を3Dスキャンしてデジタルスカルプトでスキャンミスの手直しをしたものを、以下に参考に挙げておきたい。こちらもできるだけ粘土っぽい質感になるようにあえて凹凸感を加えるなどの調整をしていることに留意。

Rocket and Planet by Fumiya Funatsu on Sketchfab

全体構造

この図でおしまいにしてしまってもいいくらい、伝えたいことはこれだけといえばこれだけ。(ノウハウなどはもちろん後述したい。)

粘土造形などでは普通、骨格に針金などを用い、肉付けに粘土を使い、表面のベースに必要に応じてモデリングペーストやプライマーなどを使うと思う。今回の手法では塗装領域であるプライマーまでは踏み込んでいないものの、それらを別の材料(骨格は3Dペン=PLA、肉付けはグルーガン=ホットボンド、さらに表面を強化・研磨加工するためにジョイントコンパウンド)で置き換えたものとなっている。

なぜ置き換えたかについて、まず、自分自身がファストプロトタイプを行いたいので、臨機応変に形状を変えたいというのがある。

例えば針金で骨を作ってしまうと、間違えちゃったなと思ったとき、骨の硬さが邪魔になって、形状変更がしづらい。(正直この段階で木材などで代替して…完。でもいいっちゃいい。)

代わりに、次のステップとして全工程を3Dペン(PLA)で作ろうとしたところ、いわゆるアイロン工程といわれるハンダゴテでのスムージングが非常に大変なのと、3Dペン自体そんなに量を出せるものではないので単純に時間がかかる。(参考動画3: *3)

そこで、よく身近で手に入ったグルーガンで肉付けを加えようとすると、今度は表面加工が大変になるし、温度にも弱く、ちょっとしたことで形状が変わってしまうので、困っていた。

困っていたとき、全く別の観点で、粘土造形の最終加工をしやすくする、ジョイントコンパウンドに目をつけた。(参考動画1: *1)

表面をジョイントコンパウンドで埋めることによって、乾燥後に固くなり、研磨が可能になる。ただし、グルーガンとジョイントコンパウンドは(冷えていると)すぐにくっつくものではないので、何回にも分けて乾燥・定着を繰り返す(だいたい3回ほど繰り返す)。この工程はヒートガンやドライヤーなどで高速化することが可能なものの、粘土と同じで急速乾燥すると割れが発生しやすいので、1層目と2層目の乾燥だけにヒートガンを使うことをおすすめする。

流れ

まず今回作るもの

さて、ここまで全体構造や概要を見てきたので、実際の作業を写真と共にご紹介したい。今回作るのは、以下のような立体の三角形で、立方体の三角バージョン(つまり正四面体)。

3Dペン(PLA)で骨組み

まず最初に、3Dペン(PLA)で形を作っていく。この部分は特に説明することはないかなと思うけれど、骨がしっかりしていればその分造形全体もしっかりするので、可能な限り埋めるように自分はしている。

ちなみに冒頭で紹介したロケットのような作品の骨組みは以下のような感じ。この段階で概形は決まる。

(3Dペン工程の詳細は、参考動画3を見ていただくか、次記事を参考にしていただければと思う。)

グルーガンで肉付け

次に、グルーガンで肉付けをしていく。これもひたすらやるのみなのだけれど、3Dペンを骨にしているため、温度上昇で溶けやすく、時々氷や水で冷やしたりしながら作業を行う。

ちなみにグルーガンだけで安定する場合は(温度には弱くなるけれど)別にそれでもよくて、冒頭で紹介したロケット&惑星の、惑星の突起はグルーガンで後から加えている。

ジョイントコンパウンドで表面埋め

次に、ジョイントコンパウンドで表面を埋めていく。今回使ったのは以下の製品(ドライウォール工法用の「アクリルフィラー&ジョイントコンパウンド」)の20kgの方。(いつも小分けにしてビンで保管している。)

アクリルフィラージョイントコンパウンド【ドライウォール】4kg

アクリルフィラージョイントコンパウンド【ドライウォール】4kg

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アクリルフィラージョイントコンパウンド【ドライウォール】20kg

アクリルフィラージョイントコンパウンド【ドライウォール】20kg

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【3/12 追記】「アクリルフィラー&ジョイントコンパウンド」の主成分は(手元にある上記のもので)石炭石・アクリルポリマー・水とある。仕上げ下地用とあり、水性ペースト状と記載がある。

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1層目は以下のような感じ。定着が悪いのでヒートガンやドライヤーをうまく使って次の層に進むと良い。(ただし、温度を上げすぎると形状が変わってしまうので、温めすぎに注意。)

2層目〜4層目。だんだんとしっかりしてくる。最終層はヒートガンを使わない乾燥がおすすめ。だいたい2時間程度で研磨ができるようになるものの、半日自然乾燥させるのがおすすめ。

研磨

次に研磨を行う。粉塵が飛ぶので、マスク等は必須で、室内の場合はエンクロージャー(囲い)や換気などの防塵対策が必須。ただ、ジョイントコンパウンドは無臭で、塗装材のような臭いはない。

ジョイントコンパウンドは乾くと、木材とまではいかないものの、石膏のような感じになるので、最初の研磨はノコヤスリや鬼目などで荒く削り、だんだんと細かい目のものに変えていく。

小さな箇所などはリュータがおすすめで、最終仕上げもリュータがあると仕上がりにだいぶ違いが出てくるものの、機械による回転で粉塵は飛びやすくなるので、好みで使い分けると良いと思う。(細かい部分はニッパーなどでも切削は可能。)

なお、削っていくと以下のように中の材が見えてくるのだけれど、最終的に塗装をしたり、もう一度ジョイントコンパウンドを重ね塗りしたりが自由にできるので、気にせず削っていくと良い。(型取り複製する場合はなおのこと気にしなくて良い。)

また、削ると足りない部分が出てくる(中の空洞など)が、この場合はまたジョイントコンパウンドを足せば良い。ただしヒートガンで高速乾燥させると割れが生じてまた穴が空きやすいので、自然乾燥させるのがおすすめ。

本来は#1000や#2000(やそれ以上)でもっともっと細かく削っていくべきなのだけれど、今回は説明のためにこの段階で次にいく。

塗装

最後に塗装。この段階でプライマーなどを使って細かな凹凸を埋めたり、エアブラシを使うとクオリティが上がると思う。

自分はシンプルにジェッソ(アクリル塗装などのベース材=地塗り材)をハケで塗った。ハケで塗ると当然ながら塗装痕が出る。

ジョイントコンパウンドと同じように、何度かに分けて重ね塗りすることで、仕上がりに差が出てくる。

(ちなみにジェッソは簡単ではあるものの、仕上材ではなくベース材だし、結構厚く固まり凹凸がついてしまうので、特にハケで塗るのはあまりおすすめはしない。臭うし。)

完成

これで乾燥させて、完成。

今回は研磨の度合いも低いし、塗装にハケを使ったりジェッソを使ったりしているので、凹凸が残る仕上がりになっている。

自分はあんまり繊細な加工が得意ではないので、説明用なのもあってそうしたけれど、実際には丁寧に仕上げることで、もっと滑らかな表面を得ることもできる。

(参考に別の塗装材で仕上げたものの写真を上げておく。これもハケで仕上げたものだけれど、塗装材一つ違うと印象はだいぶ変わる。エアブラシ等を使うともっと良いはず。)

ちなみに完成品は見た目によらず意外に重い。この黒いやつの見た目で80gくらい。ジョイントコンパウンド自体もちょっと重いし、グルーガン(ホットボンド)も実はちょっと重いからなのだと思う。(その分だけそこそこしっかりもしている。)

まとめ

今回は、ファストプロトタイプに向いていながら、最終研磨なども可能で、kgあたりが比較的安価な方法を紹介した。

とはいえ、3Dペンで使うPLAもジョイントコンパウンドも、kg単位でしか買えないことが多いので、初期投資が安いといえるかといえばちょっと微妙。

そのため、初期投資のコストを下げるなら、従来通りのやり方で骨や肉付けを自由な素材で行い、最後に樹脂粘土や石粉粘土などで仕上げをするのがいいと思う。(単価が高くても良いならレジンも良い。)

今回重視したのは、とにかくたくさん失敗しても良い方法で、事前スケッチなどなしに自由に造形できる手法の開拓だったので、もし樹脂粘土や石粉粘土のkg単価が安い入手ルートがあるなら、それでもいいかもしれないし、高級な粘土も今回と同じように表面にだけ薄く使えば安上がりかもしれない。*6

自分がこの記事で伝えたかったのは、素材や手法も自由にいろいろ試行錯誤すると楽しいよということ。実際自分も今回の方法に満足しているかというとそうではなくて、熱に弱いとか、乾燥時間がかかるとか、研磨したら粉が舞うとか、いろんな悩みは(どんな方法を選んだとしても)付きまとうので、制作者さんの環境にあったやり方と材料を選んでいくのが良いと思う。

最後に補足として、もし最終的にレジンなどで型取りして複製したり別の材で射出成形するなどであれば、最終塗装は必要ない。(もしかすると熱に弱いという性質も、型取り用の一時造形ならデメリットを相殺できるかもしれない)。3Dプリンタ+表面研磨や3Dプリンタ+型取り複製でも似たことはできると思うので、最終仕上がりにこだわらず好きなやり方を選んでもらえれば。

脚注

*1:参考動画1: https://www.youtube.com/watch?v=5SCFi_XP4vA

*2:参考動画2: https://www.youtube.com/watch?v=5KWB-q0j8r4

*3:参考動画3: https://www.youtube.com/watch?v=JE06lr3VY30

*4:熱に弱い点について、表面のジョイントコンパウンドは固く強固なので、それによって補ってはいるが、あくまで表面素材なので、全体として熱に弱いことには変わりないはず。

*5:3Dペン、TemuとかAliExpressとかでは安く買えたりするけれど、Amazonやヨドバシの通販などでは売れないためか年々高くなっていて、先細りなのかなと思うとちょっと残念。3Dプリンタの射出器を改造して作れたりしそうなもんではあるけど。

*6: ちなみに今回の手法以外では、スタイロフォームや発泡スチロールで概形を作るというのは例えばFRP造形などでも比較的よく使われている方法かなと思う。大きな造形物の場合はそちらのほうが向いている場合があるし、そんな感じで好きな素材を試行錯誤するのが良いと思う。